先週、立て続けに2回、胡散臭い訪問販売の営業マンが我が家を訪れました。ドアフォンの液晶画面越しにしか、その容姿を垣間見ていませんが、2人とも首からはIDカードらしきものをぶら下げ、ジャケットを羽織り、それなりの身なりをした男性と女性でした。彼らに共通していたのは、活舌が良く、とにかく(不必要に)元気が良いこと。でも、何のために来たのか、自身の名前や会社名など詳細は話さないこと。そして、「今度、この地域の担当をさせていただくことになりました。」と、いかにもこの先長いお付き合いとなることを仄めかすこと。また、一連のトークの最後には判を押したように、「お渡ししたい大事な資料があるので、玄関先までお願いします!」と、こうするのがさも”当然”であるかのように要求してくることでした。
ここで少し話が逸れますが、”カチッサー実験”というのをご存知でしょうか?心理学者のエレン・ランガーが行った、有名なコピー機の実験というのがあります。どのような実験かというと、順番待ちをしているコピー機の一番先頭の人の元へ行き、3通りの言い方で「先に5枚コピーをさせてほしい」と自分の要求を伝えるというものです。声掛けは以下の3通りです。
1,コピー機を使わせてください(要求のみ)
2,コピーを取りたいので、コピー機を使わせてください(理由になっていない理由をつけた要求)
3,急いでいるので、コピー機を使わせてください(理由をつけた要求)
結果はどうだったかと言うと、1の要求のみの承諾率は最も低く、60%でした。これは何となく納得ですよね。でも面白いのは、2の理由になっていない理由と、3の理由をつけた要求の承諾率が、93%、94%とほぼ同じだったことです。
つまりこれがどのようなことを意味しているかと言うと、人間と言うのは、他人からしてほしいことや頼みたいことを要求された場合、何かしらの理由付けをされた方が、(それがたとえ意味のない理由に思えたとしても)相手を承諾したり承認しやすい生き物だ、ということなのです。これを俗に”カチッサー効果”と呼んでいます。
ここで再び、先ほどの胡散臭い営業マンに話を戻しますが、彼らの用いた手法がまさにこのカチッサー効果でした。
「お渡ししたい大事な資料があるので、玄関先までお願いします!」
「大事な資料を渡したいので」と言いますが、見てもいないのに、どうしてそれが大事な資料だと言えるのでしょうか?でも、そう当然のように言われて、なんだか分からないけれど、玄関先に行って扉を開けてしまう高齢者は決して少なくないように思うのです。
恐らく、彼らの目的は資料を渡すことではないでしょう。(このコロナ禍にも関わらず)こんな安っぽい心理手法を用いてまで、対面での話しに持ち込むことで、家主の識別判断力がどれくらいあるのか?家族構成は?息子や娘の名前は?それらを聞き出し、詐欺集団のトップに報告することだってあるかも知れません。悪人と言うのは、悪への努力を惜しまないとは言ったものです。
「お渡ししたい大事な資料があるので、玄関先までお願いします!」
こう要求された後のわたしの返答は2回ともこうでした。
嫌です!!!!
そして、ぶちっとドアフォンの電源を切りました。
以前なら、無意識下で、何にせよ、相手の要求に答えられない自分への罪悪感のようなものから、
「いま、忙しいので・・」とか、
「ごめんなさい、結構です」とか、
自分の方が悪い人であるかのごとく、うだうだでぐだぐだな対応をしていたと思います。これって結果的に相手につけ入るスキと理由を与えるだけなのに。
でも、この手の要求には仏心など一切必要ありません。こんなチープな要求テクニックに陥ってはいけません。罪悪感も不要です!答えは一つ!
嫌です!!!!
これで十分ですよ。^^
何より、嫌な要求を嫌だと感じている自分とそれに対する言動が一致した時の爽快感は、自分自身の過去に受けた心の傷のパターンを癒します。これまで、他人から面倒ごとを押し付けられて、損ばかりしてきたと感じている方は、失礼で利害関係のない悪徳訪問販売への応対などから、自分の意思を主張する練習を始められても良いと思います。
きょうも、最後までお読みくださり
ありがとうございました^^
さとうみゆき
写真を眺めてほっと一息^^