hanahiroinoniwa.hatenablog.com
実は前回の記事には続きがあるのです。
2人目の胡散臭い営業マンの訪問を受けた後、わたしは市役所に電話を入れたのでした。市の方から巡回車や、市報等のアナログ媒体で、広く注意喚起を促してもらえたらなと思ったからです。
訪問を受けた大概の人が相手の”胡散臭さ”を嗅ぎ取り、どうにか濃い接触は回避できるでしょう。でも、ひとり暮らしで話し相手が欲しい高齢者や、認知症が始まっている方などは、それこそ相手の話術の思う壺。相手にとって”美味しい情報”をついつい心を許して話してしまう・・なんてこともないとは言い切れません。現役世代に関しては、このようなブログ記事を始め、SNSによる注意喚起はいくらでも発信できます。が、一番犯罪のターゲットになりやすい高齢者はSNSは縁遠い世界です。だからこそ、巡回車や市報といったアナログな方法こそが一番効果的で手っ取り早いと考えたのです。
電話をする前、わたしは営業マンたちの風貌や話した内容などを出来るだけ冷静に具体的に伝えられるよう、メモを作りました。わたしが暮らしているK市というのは、日頃から人権をはじめとするデリケートな問題で行政と市民が”打々発止”やり合うことが多く、この電話も単なる”うるさ型の市民”からの”クレーム”として受け取られてしまうことだけは避けたいと思いました。
電話は市役所の代表につながりました。まず、自分の名前をフルネームで名乗り、手短に要件を伝えると、「少々、お待ちください」という返答の後しばらくして、某課へとつながりました。わたしは再度名前を名乗り、実は本日と一昨日に・・・という前置きの後、予めメモしておいた内容を、ゆっくりと落ち着いて話していきました。そして、高齢者の方に何か被害が出てからでは遅いので、どのような形であれ、市をあげて広く伝わるような注意喚起をお願いできませんか、と提案しました。
ところが途中から、わたしは話すのがどこかバカバカしく思えてきている自分に気づきました。相手は、わたしが何を言っても、
「あ~そうなんですね~」
「そうだったんですか~」
「あ~はい~はい~」
「なるほど~」
「そうですか~」
しか言わないのです。確かに返答はあるけれど、その言葉の端々からは、「早くこの話終わってくれないかな~」、「めんどくさ~」、「こっちは忙しいんですけど~」という気配がありありと伝わってくるのです。胸の奥の方が、どんどん冷えて、しゅるしゅると隙間風が吹き抜けて、自分がわなわなと萎んでいくような感じがしました。
最終的に、「本日は、貴重な情報をありがとうございました。」という言葉で会話は終わりになりましたが、じゃあ、その情報を今後どうするかについては、何も説明がありませんでした。
なんだか未消化で虚しい気持ちのまま電話を切った後、私は相手になぜ話を聴いてもらえていないと感じたのかを振り返ってみました。確かに話した内容に対して、”相槌”のようなものや、”そうなんですね~”といった承認・受容めいた返事はもらえています。でも、そう!分かったんです!
「それは嫌な思いをされましたね!」
「怖かったですね!」
「確かに高齢者の方たち、心配ですよね!」
と言った、感情への寄り添いや、応答・呼応が電話中一度もなかったのです。傾聴ではこれを“感情を聴く”といいます。
ところで、傾聴やカウンセリングを学んだことがある方は、講座の中で一度は、こんなペアワークをしたことはありませんか?一方にはわざと相手の話を聴いていないように振る舞ってもらい、もう一方には話したいことをただ話してもらう。その時、話し手側には心身共にどのような感覚が生じるのかをトラッキングしてもらうのです。
ただ、このペアワーク。所詮は顔を見知った受講生同士。”聴いてない”と言っても、 あくまで”フリ”ですから、心のどこかでは状況はフィクションだと分かっています。今回、本当に見ず知らずの方に、それも電話越しに”フリ”ではなく実際の”聴いてない”(正確には、聴いてる風で聴いてない)をされてみて、それが話し手の心身に与える影響や、罪深さを、はからずも体感することとなりました。いやはや、こんなにも”聴いてもらえてない”って、話し手の想いを挫くのですね。そして、上手くやってるつもりでも、相手には筒抜け・・・。怖いなあ・・・と思いました。これは自戒を込めて、心に刻みたいと思っています。
幸い、あの後からは胡散臭い営業マンは来ていませんが、自分の身近の高齢者の方から、たとえ非効率でも、たったひとりから、「最近、こんなことがあって・・・・。・・・だから、気をつけてね!」と声かけをしていきたいと思っています。
きょうも、最後までお読みくださり
ありがとうございました^^
さとうみゆき
写真を眺めてほっと一息^^