写真の芸術性って何なのだろう？
この疑問を今年は本当によく考えました。
やはりDrawingを中心とした作品展示を扱うギャラリーで働いたことが、良い意味でも悪い意味でも、写真というアートについて、これまでとは全く異なる視点で見直す機会となったのでした。
考えてみたら、メーカーこそ違うけれど、カメラのシステムや仕組みはどれもだいたい同じです。ISO、F値、シャッタースピードと言う基本のトライアングルを操り、そこにホワイトバランスや彩度、コントラストと言った味付けをしていく。
この味付け部分に関しては、今となってはLightoomを筆頭に、スマホのアプリでも誰でも簡単に変更できちゃう。
つまり、乱暴な表現をしますが、同じカメラ、同じレンズ、同じ被写体、同時刻で、同じアングル、同じカメラ設定、同じレタッチソフトで、まったく同じ編集作業を施せば、誰が撮っても、同じ写真が出来上がってしまう・・・
更に言えば、上記のデータを同じ用紙に印刷すれば、全く同じ作品を生み出すことも可能です。
その可能性の大前提があるからこそ、写真と言うアートの価値は、どうしても絵画よりも一段低く見られがちなのではないかと考えられます。それゆえに、最近のNFTブームと言うのは、必然の流れなのでしょう。
絵画というのは、筆圧・筆運び、絵具の配色、デッサン・・・制作過程のどこをとっても、そのアーテイストのオリジナルです。完成した作品は、この世でただ1点。
仮に展示されたのが印刷した複製画だったとしても、オリジナルは1点しかないという大前提があるため、顧客はそれがデジタル化された高額なポスターであったとしても、歓んでそれを買い求めるのです。デジタル化されたのだから、それは写真と同じではないのか？と思うのですが、そもそも複製可能かそうでないかの大前提は、デジタル化された後でも顕在なのです。
写真を売るって社会的によほど有名にならないと無理じゃない？
何なら、たとえ写真家の作品じゃなくても、知名度のある人が撮ったNFT作品の方が売れてるし！と、辟易した時期もありました。
しかし、ギャラリーを離れてしばらく経った今、その考え方は変わってきました。
そもそも両者は同じ土俵で比べられるアートではなかったことに気が付いたからです。
写真と言うのは、”出逢いの芸術＝The art of encounter”ではないでしょうか？
絵画と違って写真は既に存在している何かを写すことからはじまります。
０→１ではなく、
1→∞なのです。
写す人間と何かが出逢うことでしか、制作（撮影）が始まりません。
イマジネーションの中から被写体を生み出し、それを描くことで作品に仕上げる絵画との決定的な違いがここです。とにかく、自ら動いて、何かと出逢って、心を動かされて初めてシャッターを切ることができます。出逢わなければ、始まらない。被写体との出逢いありきなのです。
写したものは、言わば写真家の出逢いの・・・、出逢いの感覚の表現です。
その感覚こそが、芸術性の根っこにあるからこそ、同じ被写体であっても、どんな出逢いであったかの感覚で、全く違う作品になるのです。
SNSなどを見ていると、写真だとかレタッチだとか、カメラの云々について、全く詳しくなさそう方が何気なく撮った写真に、激しく心を揺さぶられることが多々ありますが、恐らく、「出逢いの感覚」が豊かな方なのでしょう。もう、惚れ惚れしてしまいます。逆に、構図から編集から何から何まで完璧に見えるのに、全く心動かされない写真だってあります。
そこに気づいてしまったからこそ、「そこに居る力」に、私はいま、とても惹かれるのです。
つならない生き方をしていたら、つまらないことにしか出会えないのでしょう。
狭い視野で生きていたら、物事の一面しかとらえられないのでしょう。
そう考えてみると、写真ってなんて恐ろしいアートなんでしょうか！！
自分の「出逢いの感覚」の描写すべてがそこに写し出されているのです！
自分は何に出逢いたいのか？
明日、何に出逢える自分で在りたいのか？
最終的には、自分の内側へと問い続けていくより他、無いのでしょう。
きょうも最後までお読みくださりありがとうございました。
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写真家・認定心理士,産業カウンセラー
さとうみゆき
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