
昨日ご案内した「花拾いの庭」アプリのモニター募集ですが、おかげさまで定員に達したため、募集を締め切らせていただきました。
ご協力に手を挙げてくださった皆さま、本当にありがとうございます。
これから約2週間、実際に使っていただきながら、ご感想やお気づきをお聞きできることを楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、今日は少し、「なぜ私は花拾いの庭アプリをつくったのか」というお話をしたいと思います。
この「花拾いの庭」は、巷によくある毎日の出来事を記録し、分析することに特化したジャーナリングアプリではありません。
私がこのアプリで育てたかったのは、身体の中に生まれた、まだ名前のない感覚に耳を澄ませ、それを少しずつ言葉にしていく力です。
この発想の背景には、フォーカシングの創始者である哲学者、ユージン・ジェンドリンの研究があります。
ジェンドリンは、カウンセリングが成功するケースと、思うように進展しないケースを数多く観察しました。
そこで彼が注目したのは、セラピストの技法や態度ではありませんでした。
目を向けたのは、クライエント自身でした。
彼は、注意深く研究を重ねる中で、自己理解が深まっていく人と、そうでない人では、「話し方」に違いがあることを見いだしました。
その違いは、話し方そのものではありません。
自分の身体に生まれている、まだ言葉になっていない「実感」とどのように関わり、それをどのように言葉にしているか。その違いだったのです。
ジェンドリンは、この実感への触れ方を「体験過程(EXP)スケール」という7段階の尺度として整理しました。(池見 陽:心のメッセージを聴くより参照)

初めの段階では、出来事を説明することが中心です。
「今日はこんなことがありました。」
「私はこう思います。」
そんなふうに、自分の考えや出来事について語っています。
ところが、EXPスケールが4段階を超える頃から、語られるものは変わっていきます。
例えば、
「仕事のことを考えると、胸が重くなる。」
「胸の奥に、角ばった塊があるような感じがする。」
このように、出来事そのものではなく、自分の身体の中で何が起きているのかを語れるようになってくるのです。
さらに進むと、
「あの重苦しさは、不安ではなく、本当は怒りだったんだ。」
というような新しい気づきが生まれ、その気づきは人生全体の理解へと広がっていきます。
つまり、カウンセリングが深まるためには、まず自分自身が身体の実感に触れられることが、とても大切なのです。
ジェンドリンの研究でも、上手く進んでいるカウンセリングにおいては、クライエントがスケール4以上で語ることができていると述べられています。
私はこの研究を読み返したとき、あることを強く感じました。
どんなに経験豊かなカウンセラーであっても、クライエント自身が自分の実感に触れ、それを少しずつ言葉にしていくことが難しければ、カウンセリングだけでそこへ到達することには限界がある。
もちろん、カウンセリングはその力を育んでいく営みでもあります。
けれど、日々の暮らしの中で、自分の実感に耳を澄ませる習慣があったなら、カウンセリングを受ける時間はもっと豊かなものになるのではないか。
そんなことを考えるようになったのです。
私は、そのためのささやかな、でも、確かなお稽古の場をつくりたいと思ったのです。
それが、「花拾いの庭アプリ」です。
どんなに辛い体験、重度のトラウマを負ってしまい、心が凍ってしまったかのように見える人でも、真に無感情、無感覚な人はいません。
最初はただ、「何となく引っかかる」「胸がざわつく」「言葉にはできないけれど、何かある」・・・
そんなふうに、身体の中に現れてくる。
その感覚と急いで答えを出そうとせず、適度な距離を置いて、ほんの少しだけ一緒に過ごしてみる。
すると、
「悲しかったんだ。」
「悔しかったんだ。」
「本当は安心したかったんだ。」
そんな言葉が、じわじわと姿を現してきます。
霧の中にぼんやり見えていた景色が、少しずつ輪郭を持ちはじめるように。
言葉になることで、初めて自分自身も、その感覚を理解できるようになります。
「花拾いの庭」は、その時間を毎日の暮らしの中につくるためのアプリです。
風から届く問いに触れ、その日の実感に耳を澄ませ、一輪の花として拾う。
拾った花は、セルフの樹の根元へ還っていきます。
どんな一日も、無駄にはならない。
どんな感情も、自分を育てる土になっていく。
そんな命の循環を、目に見える形で感じられるようにしたいと思いました。
もちろん、このアプリだけで、人が劇的に変わるとは思っていません。
でも、毎日の小さな積み重ねは、自分の実感に触れる力を育て、自己理解の土台になっていくと私は信じています。
「花拾いの庭」は、日記を書くためのアプリではありません。
心理学を学ぶためのアプリでもありません。
身体の中にある、まだ名前のない声に耳を澄ませ、自分自身と少しずつ出会い直していくための庭です。
この庭が、誰かにとって安心して自分に帰ってこられる場所になれたら、とても嬉しく思います。
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きょうも最後までお読みくださりありがとうございました。
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日本心理学会認定心理士 / 療育整体師プロ
さとうみゆき
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