わたし歩記-あるき-

*心理士を目指す写真家の学びの記録*

売り込むエネルギーの重たさ

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残堀川の桜



 昨日はもうかれこれ20年ほど毎春通っている場所に桜の撮影に行ってきました。この20年の間に、わたし自身は住居が5回変わり、仕事も、やってることも、考え方も、傍に居る人等も入れ替わり、立ち替わりしたけれど、ここは本当に変わらないなあと、その時々の自分の幻影との同窓会を撮りながら楽しみました。

 

その際、詠んだ句がこちらです。 

miusato.com

 

 

 実は桜の撮影の前にひとつ訪れていた場所がありました。
それがこちらです。

 

↓   ↓   ↓

 

 

artvivant-llado.net

 

 

 一時期、頻繁にSNS広告があがってきていたので、告知を目にされていた方も多いのではないでしょうか。リャドは、生きていれば今年75歳。”光の収集家”とも称される、スペインを代表する画家です。わたしも大好きなモネへのオマージュを強く感じさせる作品が多く、その光の捉え方には感じ入る要素が多いため、原画からぜひ学ばせてもらいたいと、今回の展示に赴いたのでした。

 

 

展示ホールに一歩踏み入れたわたしを迎えてくれたのは、陰翳の美しい「LA ALHAMBRTA」という作品でした。撮影はNGでしたが、接近は可能とのことだったので、思わず近寄って、筆跡や筆圧を目で撫でるようにして隅から隅まで味わっていきました。少し離れた距離からは分からなかったのですが、リャドの筆跡はかなりダイナミックで大胆。光が繊細で絶えず揺れ動いているように見えるモネの筆とはその質が全く異なることがよく分かりました。光の塊が大きい・・そんな風に感じました。次の「フローレス」と言う作品も、リャドにはこんな風に境界の「滲み」が見えているのかあ・・などと想像してはひとりニンマリしておりました。

 

 

 ところが、これは楽しくなってきたぞ!と思いつつ、さらに会場の奥へと足を踏み入れたあたりから、場の気配が何やらおかしくなってきました。来場者にひとりずつ、介添え人があてがわれ、絵についての解説をしてくれているようなのでした。わたしの横にも学芸員風の女性が「こちらは先ほどご覧になった原画をもとに制作した版画で・・・」と言う枕詞と共にぴたっと張り付いてきました。最初の内は、「まあ、制作の話が聴けるのはありがたいかも・・・」と彼女の話に頷いたり、関心を示したりしていたのですが、ある質問をされた時に、あ!わたし今、絵のセールスをされてるのね!と合点がいったのでした。

 

 

「お部屋に普段から絵などは飾られていますか?」
「リャドの版画は、油絵と違って傷み等を気にせず、お部屋で見て楽しむことができるんです。」

 

 

 まあ、そこからは、上品な、けれども”売り込み”特有のエネルギーがわたしに向かってまるで油絵具のように、少しずつ、少しずつ塗り重ねられいきました。原画であれ、版画であれ、じっくりと心ゆくまで鑑賞したいと思っているわたしにとって、それはまさにご飯を食べている犬からトレーを取り上げるような妨害行為。話を聴き出すうちに、お財布の出どころがわたしではないと察知したのでしょう。

 

 

「ご主人さまは絵画や芸術にご関心はおありですか?」

「最近は巣ごもり需要で絵を購入される方も多いのですよ。」

 

の一言に、ついにそれまで我慢してきた糸がぷつんと切れてしまいました。

 

 

「夫は芸術には全くの無関心です!(ほんとは、わたしより詳しいと思うけど)」
「今日も誘ったけど行かないって言われました。(ほんとは羨ましがってたけど)」
「それから、家にはこのカンバスサイズの絵をかける壁もないので。(これは事実!)」

 

と一気にまくしたてたところ、セールスの価値無しと諦めてくれたのか、離れていってくれました。それからいそいそとリャドの原画の展示スペースに戻ったのですが、原画は売り物ではないためか、そこには販売員は来ないと言う妙な矛盾の中、しばし原画との別れを惜しみ、もやんとした気持ちごと会場を後にしました。

 

 

 それにしても、久しぶりに「売り込み」のエネルギーと言うものに触れましたが、あれって、なんであんなに”重たい”んでしょうか?正直、リャドの版画は、絵画の巨匠たちの作品に比べたら、お値段もお手頃だし、作品がよほど気に入ったのなら購入できなくもない代物なのです。シルクに高度な技術で複数回、重ねて印刷を施したものなので所有価値だってある。展示の意図も「販売会」とちゃんと謳ってあるので、こちら側もセールスをされても文句は言えない立場なのです。でも、芸術作品のお値段って、そもそもあって無いようなもの。購入の決め手となるのは、作品の機能云々ではなくて、その作品をどれだけ「好き」なのか「素晴らしい」と思っているのかをとことん来場者と共有して盛り上がる方が、結果、購入につながるような気がするのですけどね。

 

 

 話が長くなりましたが、リャドの作品に触れたことで、改めてモネの心眼の偉大さを思い知りました。完成した作品への優越の問題ではなくて、思索の過程ってこんなにも作品に現れてしまうものなのかと怖くなり、それはもう、身が引き締まる思いがしました。

 

 

きょうも、最後までお読みくださり
ありがとうございました^^
さとうみゆき

 

 

 

写真を眺めてほっと一息^^  

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