わたし歩記-あるき-

心理カウンセラーでもある写真家のブログです

愛着障害と脳内ホルモンの関係

Sonyα7Ⅳ with sigma85㎜ f1.4 dgdn art

 

 愛着障害で苦しんでいる方の中には、人と親密につながりたいと心から願っているにも関わらず、気づけば自分から、親密になれそうだった関係を切ってしまう・・という方も多くいらっしゃるのではないかと思います。俗に「リセット症候群」などと呼ばれている状態も、愛着問題が絡んでいるケースがあるのではないか?と推察します。

 

 ではなぜ、そんな悲しい事態を自ら選択してしまうのでしょうか?

 

 ひとつの要因としてですが、脳下垂体から分泌されるオキシトシンというホルモンと、脳の扁桃体との関係を考えてみると、実に興味深いです。

 

 

 オキシトシンは主に、母親の授乳や出産をサポートするホルモンとして知られています。「幸せホルモン」等とも呼ばれていますよね。

 

 また、人に抱きしめられたり、くっついたり、頭を優しくなでられたり、ニコニコ微笑まれたり、逆に微笑み返したり、優しく見つめられたり、こちらも見つめ返したり・・・といった、穏やかな対人交流によって分泌が増えると言われています。

 

 そしてそのことで、「不安」や「恐怖」、「怒り」、「驚愕」、「悲しみ」、「嫌悪」といった、一般的に、ネガテイブに分類されている感情の軽減をサポートすると言われています。

 

 一方、脳の扁桃体ですが、こちらは大脳辺縁系(古い動物的な原始脳にあたる部分)の一部です。人の表情筋等から、その人が自分にとって安心・安全・報酬的か、または、危険で脅威かを一瞬で判断し(表情認知)、情動行動をすばやく発起させる役割があります。

 

 扁桃体には、生まれてから今日までの、人の表情と感情(喜怒哀楽)の組み合わせの膨大なデータが備蓄されていて、脳幹や大脳基底核等とも連携を図っています。つまり、ポリヴェーガル理論的に考えると、”闘争・逃走”反応や、人と安心して繋がることを可能にする腹側迷走神経複合体の働き等と深い関りがあると言うことです。そして、扁桃体にはオキシトシンの受容体が沢山存在していることで知られています。

 

 

 例えば、あなたが小さな子どもだったとして、目の前の大人がものすごく怒りを露わにしていたとします。それを見たあなたの扁桃体は、「この人、すごく怒っていて怖い!逃げなくちゃ!」と判断したとします。身体が緊張し、心臓はドキドキし、足や手にぎゅっと力が入って、逃走態勢に入ります。どうにか逃げ切って、自分の家に帰りつき、優しいお母さんが、「こんなに怯えてどうしたの?怖かったのね!よしよし、もう大丈夫だからね」とにっこり微笑み、あなたを抱きしめて、頭をとんとんしてくれたとします。すると、あなたの視床下部からオキシトシンが分泌し、それが扁桃体に運ばれ、体験した不安や恐怖を和らげていく・・・といった感じです。

 

 

小さなあなたは、優しい笑顔と愛情のこもったタッチが、不安や恐怖を減らしてくれる・・ということを、「手続き記憶」として学んでいきます。

 

 

ところが、もし、恐怖と脅威と不安をもたらす対象と、愛情の源であるべき人物が同じ人間だったとしたらどうなるでしょうか?つまり、養育者が身体的・心理的・情緒的虐待を行っていた場合です。

 

 

 ある時まではニコニコ笑っていた養育者が、理由は分からなけれど、突然キレて自分を殴り出す、あるいは、無視し始める・・・・。そして、それがしばらく続いたかと思えば、急にまた優しく抱きしめられる。もっと奇妙な場合として、ニコニコ微笑みながら、にっこりと見つめられながら殴られる・・・。性暴力に至っては、もっと複雑な状況がそこには存在するでしょう。

 

 

 あなたの扁桃体の正しい「表情認知」は、崩壊します。そして、正常な人であれば、優しく見つめられた時に分泌され、不安や脅威を軽減してくれた「オキシトシン」は、愛着障害の人にとっては、「不安」、「恐怖」、「脅威」、「裏切り」の始まりとして、あなたの自律神経を誘導してしまうのです。そう、たとえ、あなたに微笑んだ人が、本当に心からあなたを大切に思っている方だったとしても・・・・。

 

 

 これが、愛着障害の人が、心の底から人と親密につながりたいと思っているにも関わらず、それが出来そうになると、何故か急にその関係性から逃げ出したくなってしまう現象の理由のひとつです。

 

 

 改めて言いますが、これは自律神経の自動反応のため、あなたのせいではありません。認知やブリーフの書き換えで、簡単にどうにかなる問題ではないのです。(私がカウンセリングを学んだ精神科医の先生も、”愛着障害の方は認知行動療法が何故か効かないんだ・・”とはっきり仰っていました)

 

 

これが現在臨床で、神経系へのアプローチが強く叫ばれている理由であると考えます。

 

 

 

きょうも最後までお読みくださりありがとうございました。

 

 

写真家・認定心理士,産業カウンセラー
さとうみゆき

 

 

 

今年から花拾いの庭公式LINEができました!

友だち追加 

 

ご登録の方には、たったの3分ほどで、副交感神経(腹側迷走神経系を活性化)をリラックスさせ、サバイバルモードから抜ける動きをレクチャーした動画を自動でプレゼントしております。

 

傾聴・カウンセリングお申込みフォーム
(40分 3,300円)

 

hanahiroinoniwa.com