昨年、NHKで放送されたドラマ『デフ・ヴォイス』。ご覧になりましたか?
主演は草彅 剛さんです。
簡単なあらすじを引用しますと、
仕事と結婚に失敗した荒井尚人。家族や恋人に心を開けないでいるのだが、生活のため唯一の技能を活かして就職活動をはじめる。その技能とは“手話”。彼は耳が聞こえない両親をもつコーダ(Children of Deaf Adults)だったのだ。そして彼は手話通訳士として働くことに。 やがて仕事にも慣れ、新たな生活を送りはじめた尚人のもとに届いた依頼は法廷でのろう者の通訳。この仕事をきっかけに、尚人は自身が関わった過去のある事件と対峙することに。現在と過去、二つの事件の謎が複雑に絡みはじめる…
こんな内容となります。草彅剛さん演じる尚人は、両親・兄共に耳が聞こえない家庭に、ただひとり聞こえるコーダとして生まれました。そのため、幼い頃から家族の通訳として、様々な生活の場面で、両親と兄を支えて生きてきました。
ドラマの大事な鍵となるシーンにこんな件がありました。
幼かった尚人が母親と街に買い物に出かけ、母親の背後を追うようにして歩いていた時のこと、雑踏の中で転んでしまいます。尚人は痛みと心細さから母を大声で泣いて助けを求めます。ですが当然、母には尚人の声は聞こえません。何事もなかったように前を歩いて行ってしまう母を見た尚人は、泣くのをやめ、母の元へ走り寄ります。そんな尚人を見た母は、こちらもまるで何事もなかったかのように微笑み、再び二人で歩きだす・・・
このシーンを見た時、多くの心理カウンセラーが真っ先に思ったのは、この親子の「愛着形成」への危惧ではなかったでしょうか?
このような経験を積み重ねることで、尚人は、「人に頼れない」「全て自分で解決する」「自分さえ我慢すればいい」という心性を身に着けていきます。
適切な感情の協働調整を、幼児期に養育者から受けられなかった子どもというのは、自力で感情コントロールを覚え、社会規範に過剰適応するように独自の心理発達を遂げていきます。
「人に頼ろうとしない(できない)」ことで、人間関係でも様々な支障を抱えてしまいます。尚人の場合は、離婚し、警察官だった彼は、ある事件の捜査で自身の正義感から暴走し、結果、責任を負わされ、退職してしまいます。
通常、愛着障碍と言うのは、多くの場合が、軽度MR(境界知能)の養育者とその子の間で生じます。軽度MRの養育者は、子どもの感情に共感することが難しく、また、一貫性がない対応をするからです。ひどい場合ですと虐待(心理的・身体的含め)を伴います。
このドラマの場合の愛着形成の困難要因は「情緒的ネグレクト」という部類に入ります。そして尚人は、愛着障碍の中でも、「回避型」に当てはまります。
もちろん、全ての聴覚障害を持った方のお子さんが愛着の障害を持つと言う意味ではありません。むしろ聴覚に障害のない養育者の元に生まれても、子どもの心の声を”聴いて”いない、ヘルシーな協働調整環境に置かれなかった子どもというのは、同様の困難に見舞われる可能性が高いと考えられます。
昨今、愛着障碍の原因としてこの「情緒的ネグレクト」が注目されています。自分は養育者から虐待をされたわけでもない、生活環境だって人並のケアを受けてきた・・でも、どうしてこんなにも生きづらいのだろう?という方は、「情緒的ネグレクト」に当てはまると言う方も多いのではないでしょうか?
実は、元を突き詰めれば、ヘルシーな「情緒」を支えているのは、ヘルシーな自律神経の調整に他なりません。後天的に調整能力を獲得できるよう、セッションではその方法をゆっくり、ていねいに、お伝えしています。
きょうも最後までお読みくださりありがとうございました。
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(40分 3,300円)
写真家・認定心理士,産業カウンセラー
さとうみゆき
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