「わたし、言葉がキツイので」・・というお悩み

　カウンセリングをしていると、かなりの確率でクライエント様が仰るお悩みの中に、

「わたし、言葉がキツイので・・・」

というセリフがあります。

これはどのような文脈で使われるのか？というと、

相手に本音を伝えたい、でも、なかなか思ったことが言えない。
何故なら、私は言葉がキツイので言ったら相手を傷つけてしまいそう。

とか、

自己主張がなかなか出来ない。本当は言いたいけれど、呑み込んでしまう。
何故なら、私は言葉がキツイので相手を怒らせてしまうかも知れない。

と、ざっとこんな感じです。

そして、私の知る限りではありますが、このセリフを仰る方の9割が、見た目には穏やかで優しく、好き好んで相手を傷つけようなどとは、一寸も思っていないだろうと言う方ばかりなのです。不思議ですよね？＾＾；（そして、このセリフですが、わたし自身も多用してました。＾＾；）

では何故、こういったことが起きているのでしょうか？

先ず、彼らの証言、

「わたし、言葉がキツイので・・・」

は嘘か？ホントか？で言うなら、私は「本当」なのだと思います。確かに彼らの言葉は「キツイ」のだと思います。

ただし、このセリフには、言葉が不足しています。補った後の正解は、

「わたし、心に溜め込んでいる言葉がキツイので・・・」

なのですよね。違いますか？＾＾；

このタイプの方たちは、幼少期に養育者や周囲から、自然な自己表現を強く否定されたり、感情表出を過酷な状況で制限された経験があるはずです。

そのため、他の多くの方にとっては、なんてことの無い「普通」に思える自己主張が、それを行うと「危険」に晒されるという風にインプットされてしまっているんですね。
極端な話、仲間内で「北海道に旅行したい？それとも沖縄に行く？」みたいな場面で、どちらかを選ぶことさえ、相手への暴力行為になり得ると思っている方もいます。

でも、このタイプの方が全く自己主張をしないか？というとそうではありません。先ほどの北海道と沖縄の話で言うと（本当は沖縄へいきたい人の場合）、

「北海道いいよね。梅雨もないし、自然が豊かだし、癒されそう。あ、でも、沖縄もいいよね。あったかいし。海もきれいだし。あ、でも、北海道も夏は寒くないよね？海で泳がなければ、北海道でもいいか。プライベートビーチとかないけど、観光も楽しそうだし。草原もわたし好きだから、ぜんぜん北海道でもいいんだけど・・etc。」

と、なんだかまどろっこしい。＾＾；「沖縄に行きたい！」という一言で済むところを、え？北海道がいいの？でも、微妙に北海道をデイスってない？本当は行きたくないのに、北海道でもぜんぜんいい！とか言っちゃってるよ？！

と、恐らく周囲の方は受け取っているのではないでしょうか？

そしてもし仮に、行先が北海道に決まったとしましょう。その時に思うのです、

「どうして、みんな、わたしの本心を察してくれなかったんだろう？！なんて鈍感な人達なの？！わたしのこと、全然大事に思ってくれてない。わたしは北海道推しの人を傷つけないように、北海道でもいいよって妥協したのに！いつも損してばっかり！」

って。＾＾；

そして、この上の赤い文字のセリフのことを、

「わたし、言葉がキツイので・・・」

って、言ってること、ないでしょうか？
確かに、この心の声をそのまま相手にぶつけた日には、人間関係に問題が起きそうです。でも、単に「私は沖縄がいい！」と言った場合には、それがそのまま心の声ですから、周囲からは「あ、そうなのね！」で終わりです。

そう、この

「あなたは、そうなのね！」

の経験が安心・安全の下に出来ていなかったために、かえって主張が遠回しになったり、まどろこしくなったり、ひいては偉そうに映ったりしてしまうんですね。

また、自己主張をした後に拒否される辛さが身に染みているため、「もう二度とあんな辛い想いをしたくはない！」と、正当な主張を諦めてしまっている方もいるのでは？