父が退院してから1週間が経ちました。そして奇しくも今日は父の誕生日です。お祝いの電話をしましたが母曰く、この1週間は訪問介護のスタッフさんをはじめ、リハビリ担当の方の出入りも多く、怒涛の1週間だったそうです。加えて、自力での排泄や歩行が全くできなくなってしまった父との久しぶりの生活は予想以上にハードなものだったようで、電話口の声のトーンが弱々しいのが非常に気がかりでした。
どうやら父は、オムツでの排泄をひどく嫌い、医師やリハビリの担当者からは危険な行為なので止めるように言われているトイレでの排泄を無理やり行っているようなのです。昼間なら母が気づいて止めることもできますが、夜中にひとりでしてしまうようで母は「もう、どうなっても知らないから!」とかなり腹を立てていました。またある時は、2階の自分のPCの中に入っている、元気だった頃毎日見ていた株価のデータをプリントアウトしたいと言って、不自由な身体で2階へ上がろうとしたらしく、これにはさすがに母もキレて、隣市に住むわたしの従姉夫婦を呼び、対処してもらったそうです。(ちなみにわたしが送ったタブレットのWi-Fiは彼女がセットしてくれたようで、使い方も通いで教えてくれることになりました。感謝です。)
この5ヵ月間、止まったままだった時間を少しでも取り戻したい気持ちは分かるのですが、どうか必要以上に身体の負荷になるような行動はしないで欲しいと願うばかりです。きっと入院中もこの調子で看護師さんや理学療法士さんたちを困らせていたのだろうと思うと、届かないとは言え、「父が本当にすみませんでした。」と頭を下げたくなります。
先日こちらの記事でもご紹介した玉置妙憂さんの著書、『死にゆく人の心に寄り添う』ですが、その中に興味深い単語が出てきました。それが今日の記事のタイトルである”死の質(Qualitiy of Death)”です。
死の質(Qualitiy of Death)?
Qualitiy of Life(QOL)なら聞いたことあるけど?
と言う方がほとんどですよね。実はわたしもそうでした。
死の質(Qualitiy of Death)はイギリスの雑誌『エコノミスト』が、2010年に初めて提唱した概念で、終末期医療、特に緩和ケアがどの程度整っているかという指標だそうです。「緩和ケアのための環境」,「人材」,「費用」,「ケアの質」,「地域社会との関り」という5項目の質と量を調査し、数値化してランキングをつけたのです。これまでに2010年と2015年の2回調査されており、2015年は80の国と地域が対象となりました。となると、ランキングが気になりますよね?結果はというと、2回とも1位はイギリス、2位がオーストラリア、3位がニュージーランド、4位がアイルランド、5位がベルギー、6位が台湾で、我が国日本はと言うと台湾から更に下って14位だそうです。
アジアでの死の質(Qualitiy of Death)ナンバー1の台湾は、実はスピリチュアルケアの先進国で、国や地域レベルで死に関する意識の向上や死について前向きにとらえるような啓蒙活動をしています。日本における臨床宗教師の活動のモデルになっているのも台湾なのです。台湾ではホスピスはもちろんのこと、自宅での看取りが多く行われていることも知られています。その背景には篤い宗教心が関わっていると言われていますが、それにしても日本人というのは「死」や「魂」をどう捉えるかを自由に話し合う場が少なく、ゆえに哲学的力量が幼いのかも知れません。
玉置妙憂さんの本には、少子高齢化社会の日本が今後直面していくことになるであろう状況にどう取り組んでいけばよいかの具体的なヒントが多く書かれています。いつか時期を見て母にもこの本を送ってあげようと思っています。
きょうも、最後までお読みくださり
ありがとうございました^^
さとうみゆき