昨日、入院した父と逢ってきました。
病棟の受付で、名前と入室時間を書き、首から面会カードを提げて、開け放たれたままのドアから入り、そっとカーテンをくぐると、仰向けで、何とはなしに天井をぼーっと見上げている父がそこに居ました。
さて今からの15分・・・どうしたものか。
「お父さん、来たよ・・・」
声をかけると、虚ろな目線だけが私を捉えました。
「あのねえ・・もうすぐ、死ぬから。もうすぐ、死ぬの。」
そう言って、しきりに瞬きをしています。その様子が、まるでロボットのようで、可哀そうとか気の毒にといった人間的な感情を全部もっていかれた気分でした。
手を握ると、父もぎゅっと握り返してきました。意外とまだ力は残っているようで、少し安心しました。でも、そこからが大変。
「水が飲みたい。ここね、飲ませてくれないの」
と愚痴るので、誤嚥性肺炎になると困るから今は無理なんだよと説明しました。でも、納得できない様子でした。
「冷蔵庫の中にお水があるから、出して。ストローで飲みたい。」
と、まるで子どものような物言いの父に困惑してしまいます。終いには、
「もう、いいから。お母さんと変わって!顔みたから、もういい!」
と、駄々をこね始めたので、1日ひとりしか面会できないの!と言うと、お母さん呼んで来て!とイライラし始めて・・。
そんなところでちょうど15分経過。自分はいったい何をしていたんだろう?父に何ができたんだろう?ものすごい後味の悪い気分で、病室から出て、ロビーで待っている母と妹の顔を見たら、なんだかどっと疲れが出ました。
「何も出来なかった。何も話せなかった。お母さんに変われって言われた」
とこぼすと、母は、「そんなもんよ。昨日は私、もう来るなって言われたわよ」と吐き捨てるように言いました。
その後、大きなため息をついてから、3人して無言のまま帰宅の途につきました。
これまで何度も、「これが最後かも知れない」と帰省するたびに、父には伝えるべきことをすべて伝えてきたので、そういう意味で気持ち的には後悔はないのですが、ここから、どんな風に、父のQOLを保ってあげられるのか?少しでも生きている時間を有意義に過ごしてもらうためには、何ができるのか?まだ何も思いつけない状態です。
ですが、今回、父のことと同じくらい気がかりだった、母と妹の精神状態が、思っていたより前向きだったことにほっとしました。
よく、現場にいない人の方が心的外傷ストレスが大きくなるケースがありますが、私の場合はまさにそれだったのでしょう。母からの報告で、あれこれ想像することで、二次的心的外傷ストレスを発症して、燃え尽きていた(バーンアウト)感が否めません。自分の日常生活が、楽しめなくなってしまっていたんです。否、楽しんではいけない気がしていたのです。少なくとも父が入院している間は安心して、仕事や友人たちとの時間を、楽しく過ごしていきたいと思いました。
きょうも最後までお読みくださりありがとうございました。
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写真家・認定心理士,産業カウンセラー
さとうみゆき
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