わたし歩記-あるき-

心と向き合う写真家の学びの記録*

息が深く吸えないという悩み

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 いつ頃からだったのか、正確には覚えていないのですが(でもちゃんと意識したのは28歳くらいだったかな?)、呼吸をしても息が深く吸えないというのが悩みでした。吸っても吸っても、肺の中まで入ってくる感覚が乏しいというか、常に弱い呼吸困難みたいな状態なのです。それでも、思い出したように、時々深く吸える時もあったりして、その時は、「うわ~、今、わたし、酸素が吸えた~!」みたいな気分になる。でも、それが継続するか?と言うとそうではなくて、また弱い呼吸困難状態に逆戻りしちゃう・・・。無理して吸おうとすると、肩が思い切り上がり、横隔膜が「やめてぐれ~」と抵抗する感じ。

 

 30代に入ると、瞑想やボデイワークをはじめとする自分を調える世界に興味を持ち始め、それらを学ぶ場にも多く参加してきたのですが、そこではお約束のように「深呼吸」を促す場面がありました。他の人を見ていると、講師の誘導に合わせて、こともなげに気持ちよさそうに「吸って~吐いて~」をされている方がほとんど。わたしは・・と言うと、密かに「ぐ・・ぐるじい・・・呼吸ができないよおお・・・」とテンパっておりました。^^;リズムをキチンキチンと誘導されればされるほど、ますます息ができなくなって、混乱してしまったのです。そのため、「深呼吸」を求められるワークや学びごとが正直少々恐怖でした。その中でも特にしんどかったのが、マインドフルネスでの呼吸でした。呼吸が苦しすぎて、身体の感覚にフォーカスする余裕などとてもありませんでした。^^;「正しい呼吸」に誘導されればされるほど、わたしは明晰さからは離れ、何故か自分が崩壊していく感じがしていました。

 

 

 この症状を40歳を過ぎたあたりから、健康診断の時や、婦人科にかかるたびに、医師に相談するようになりました。ですが皆一様に、「検査の数値や画像からは、どこにも異常は見られないのですけどねえ・・。しばらく様子をみましょう。」で、終わり。まあ、そう言う他ないでしょうね。確かに、数値も正常だし、病気の自覚症状もないし、食欲だってちゃんとある、健康な成人にしか見えないわけですから。

 

 

 でも、「呼吸」って生きる上での基本です。皆、無意識に当たり前のこととして「吸うと吐く」をして過ごしているのに、わたしはその営みを行うのが苦痛・・・。どうにかしたい!そう思ってそりゃもういろいろな文献を調べまくってきました。その内、「呼吸」というのは自律神経に関わることらしい・・ぐらいまでは突き止められたのですが、じゃあどうしたら?まではどうにも手がかりが掴めぬままになっていました。

 

 

 そんな私に転機が訪れたのは、3年前にたまたま心理学を学ぶ友人を介して知ったポージェス博士の提唱している「ポリヴェーカル理論」でした。(このブログでも何回か記事を書いていますね。)

 

 

 

 

 生き物は通常、何か危険に遭遇すると、先ず「戦うか逃げるか」の交感神経が有意に働きます。そして、危機を上手く回避できると、副交感神経が再び有意になり、落ち着きを取り戻すと言われています。ただこの副交感神経に、どうやら異なった働きをする回路が存在するらしいことに目を付けたのが、ポージェス博士でした。

 交感神経の「戦うか逃げるか」で危機を回避できず、捕食されることになった生物は、食べられる痛みから身を守るため、仮死状態「凍り付き・シャットダウン」に入るのですが、それを促すのが副交感神経の中の背側迷走神経複合体であることを発見したのです。
 よく「交感神経より副交感神経優位な体質にしましょう」などと言うフレーズを聞くこともありますが、副交感神経の働きの中には、このように危機に際し肉体の感覚をフリーズさせるような働きが存在するのです。

 

 このポージェスの提唱した「ポリヴェーカル理論」は後に、発達性トラウマや愛着障害の治療に応用されることになりました。つまり、この背側迷走神経複合体の働きにより、「凍り付き・シャットダウン」した状態こそが、トラウマの「解離」の状態であり、ストレスや不安が当たり前となり、もはやそれらを感じられなくなっているクライアントの状態と臨床家たちは見立てたのでした。トラウマの状態についてより詳細に知りたい方は、ベッセル・ヴァン・デア・コークによるこちらの名著もぜひ読んでみてください。

 

 

 

 

 

 わたしはポージェスとベッセル・ヴァン・デア・コークの著書を読む中で、わたしの原因不明の呼吸の浅さも、この背側迷走神経複合体による「凍り付き・シャットダウン」の不具合によるものではないか?と仮説を立てました。その線で調べていくと、まあ、原因の根拠が出てくる、出てくる!(笑)

 

 

そしてついに見つけたのでした。

 

 

 

ピーター・A・ラヴィーンの『身体に閉じ込められたトラウマ:ソマテイック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケア』によれば、

 

自律神経系が支配する行動のうち目で見てわかるものに、呼吸器系兆候および心血管系兆候がある。

早く浅いかつ/または胸上部の呼吸は交感神経が覚醒している状態を示す。非常に浅い(知覚不能なほどの)呼吸は、不動状態、シャットダウン、解離を示すことが多い。


無理して深呼吸すると、実際には神経系の不均衡が増し、せいぜい一時的な安堵しか得られない場合が多い。

 

 

 

とあります。まさに、これ、わたしのことが書いてあると思いました!さらに、じゃあ、その苦しい呼吸をどうすれば少しでも楽にできるのか?という問題を調査していったところ、『トラウマをヨーガで克服する』の中にこんな件を見つけたのです。

 

 

 

 

われわれが生徒たちに勧めるのは〈少し長い息〉と呼ばれるものである。その方法はこうである。吸う息を少し長く、吐く息も少し長くしてみる。このプラクティスの場合、鼻で呼吸しても、口で呼吸してもかまわない。

今あなたがしている、そままの呼吸に、少し何かを付け加えるだけ、つまり吸う息を少し長くし、吐く息を少し長くするだけのことである。

 

なんだか、今まで「こうあるべし!」と言われ続けてきた「正しい呼吸」や「理想の呼吸法」の呪いから解放された気分がしました。そして、実際にこの「自分の身体が楽だと思う」呼吸を続けてきているのですが、以前よりも息を吸うのが楽に深くなってきているのを実感しています。そして、なんだか自分でもよく分からない「支配」だとか「コントロール」から自由になってきているような気さえしています。本当に不思議、そして面白いです。

 

 

 もし、こちらをお読みの方の中に、何らかの「呼吸法」だとか「リラックスメソッド」を用いるお仕事をされている方がいらっしゃったとしたら、複雑性トラウマや愛着障害を抱えた方の中には、あなたが伝える「理想の呼吸法」が、かえって自律神経に負荷をかけたり、混乱を生じさせる可能性があることを、頭の片隅にでも覚えておいていただけるとありがたいかなあ・・と思います。 

 

 

 そして、同じように「息が深く吸えない」という悩みを持っている方は、時間はかかりますが、神経系を調えていくことで、症状が改善してゆく場合があります。「理想」や「正しい」呼吸を目指す前に、まずは「身体が楽になる呼吸」から始めてみてくださいね。

 

 

きょうも、最後までお読みくださり
ありがとうございました^^
さとうみゆき

 

 

 

 

写真を眺めてほっと一息^^  

 

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