土曜日は、友人が主催した「ぬり絵の会」に参加してきました。昨今「大人のぬり絵」等がブームだったりしますが、わたし自身はこれまできっかけがなかっただけなのか、自分で率先して「ぬり絵をやってみよう!」とはならなかったので、今回〇十年ぶりのぬり絵体験でした。
わたしが選んだのは、どことなくミュシャの絵を思わせるような、神秘的なイラスト。中央部にはホロスコープが描かれています。色を付ける前から眺めているだけで既にうっとり。
みんなで黙々と色を入れていきます(私のは向かって左)。
「気になる場所から、気になる色、好きな色で自由にぬってください!」
と言われ、右上の情熱的な炎のようなオブジェからぬり始めました。色は赤のトーンを基調に、オレンジ、パープル、ゴールド、マゼンタ(写真だと分かりずらいですが)ほんの少しオリーブグリーンも使っています。筆のタッチもべた塗りしたり、線を引くようになぞってみたりと、気の向くままに走らせます。みんな、黙々と、時に世間話をして微笑み合ったりと、静かで穏やかなんだけど、明るく生き生きしている・・そんな場の空気が本当に心地よかったです。
ぬり絵と言うと、色からの刺激や適度な集中により呼吸が整うこと、また、それにより自律神経が整うことが科学的にも実証されています。また今回のように、大勢で同じ場を共有することで、社会性をつかさどる腹側迷走神経複合体も活性化されますから、孤独が癒され、共感性の回復にもつながると考えられます。
ここでぬり絵に関する面白い実験データがあります。
↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/82/0/82_2AM-031/_pdf/-char/ja
どのような実験だったかと言うと、実験参加者を2つのグループに分けます。1つのグループは「自分の望む色を使用して彩色する自由選択群」として、もう1つは「模倣して彩色するように指示された強制選択群」として、塗り絵を20分間行った後に、脳波を測り、どちらのグループの方がα波が多く出たかを調査するものでした。
一見すると、「好きに」、「自由に」を許可されている、自分の望む色を使用して自由に塗ったグループの方が、α波が多く出そうだと思いますよね?ところが、結果は逆だったのです。見本を示されて、この通りに塗ってくださいと指示された方が、α波が多く出たというのです。
結果の考察として、論文では以下のように述べられています。
強制選択群が自由選択群よりも有意に α 波が増加した要因として,より構造化している強制選択群の方が創造性を要求されないため,精神的に安定したことが考えられる。より構造化した塗り絵が,絵画療法には有効である可能性が示された。
つまり、この実験データから分かるのは、私たちの精神的な安定は、「好きに~~していい」、「自由に~~していい」と言われたからと言って、必ずしも高まるとは限らないということなのです。むしろ、逆の精神的状況をもたらす可能性もあるかも知れない。「創造性」を働かせようとすること自体が、緊張や負荷をもたらすケースも考えられるのです。
とりわけ愛着障害の方や被虐経験者の場合、自分の感覚を受容されたり、認められたりした経験が極端に少なく、むしろ「好きに~~」したり、「自由に~~」した場合に攻撃や否定を経験していることが多いため、「好きに」「自由に」何かを行う行為それ自体が、虚脱や凍り付き反応へのトリガーになっている可能性があるわけです。
もし、愛着に障害がある方や、被虐者の方を対象にぬり絵をはじめとした何らかの「芸術療法」を行う場合には、「好きに」「自由に」が思いのほかハードルが高く、そのことでかえって精神状態を不安定にしてしまう可能性が考えられます。はじめは決まった色を決まった場所に塗ってみる模倣の提案から始まり、本人が自分自身に許せる「自由」を見極めながら、無理のない範囲での「好き」を実践・拡大していくところから始めるとより効果的なのかも知れません。
きょうも、最後までお読みくださり
ありがとうございました^^
さとうみゆき
写真を眺めてほっと一息^^