今から約20年前の2002年、文部科学省で初めて”発達障害の子どもが何人いるのか?”の可能性を探る調査が行われました。
その結果によると、6.3%の生徒に発達障害の可能性が認められるという結果が出たそうです。これが”発達障害”の認知度を上げるきっかけとなったとのことでした。
上の表を見てもらうとお分かりの通り、2008年に約4万人だった特別支援学級に通う子どもは、2020年になると、15万人近くに増加しており、約3倍増となっています。
何故、これほどの増加となったのか・・・これには諸説あります。
・昔から発達障害の子どもは居たけれど、現代ほど認知されていなかっただけ
・女性の社会進出が増え、高齢出産が増加したため
・実は他の心理要因(愛着障碍・栄養素不足)であるのに、発達障害だと診断されているケース
・ITの発達により生活様式が変化し、以前は問題にならなかったことが、発達の問題と見なされているケース
などなど、本当に多岐に渡っています。そのために、臨床現場の混乱も激しく、適切な対処が追い付いていないことが現状です。
そんな中、先日、ADHD/ASDグローバルサミットにて、実に興味深い知見を伺うことができました。
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「原始反射」という言葉を聞いたことがありますか?
原始反射とは、脳幹や脊髄がつかさどり、身体に何らかの刺激を受けたことによって、無意識のうちに起きる反射動作です。この反射は、おなかにいる5、6カ月くらいのときから始まり、中脳や大脳の発達に伴い消失します。
モロー反射や、対称性緊張性頚反射などが有名ですね。
一言で言うと、赤ちゃんがサバイバルするために必要とする反射で、その数なんと278個!
これらは、ひとつひとつ積み重なるようにして順番に統合されていくため、どこかで未統合が起きると、その先の統合も不安定になってしまうとのこと。
そして、この原始反射が未統合なままだと、中脳をはじめとする脳幹部分に発達の抜けが生じ、それが発達障害の要因のひとつとなっているという研究結果が出ていると言うのです。
初期の原始反射は、脳の中の橋(きょう)という部分と中脳が重要です。
橋は生後8ヶ月くらいまでに発達すると言われています。その役割はずばりサバイバルすること!危険探知レーダの役割を務めます。橋が未発達の場合、
頻繁にきれたり、癇癪を起こしやすくなります。ちょっと注意されただけ、誰かにやんわりと指摘をされただけなのに・・まるで命の危険にさらされたかのように反応してしまう。感情の起伏が激しく、ほんの些細なことで爆発したり、反対に氷つく場合も。
慢性的な不安感が続くといった方も、橋に発達の抜けがある可能性があるそうです。
また橋が未発達だと、「痛みを感じにくく」なるそうで、そのために、人の痛みを想像しにくくなり、人を叩いてしまったりする・・なんてことも起こり得ます。
慢性的にサバイバルモードになっているので、当然、いつ危険に襲われるかと緊張するため、不注意で落ち着きがなくなります。クタクタになってガス欠になる場合もあります。お子さんの場合だと、学習障害になるケースも。
この「橋」のヘルシーな発達には何が欠かせないかというと、赤ちゃんの頃の「ズリバイ」なのだそうです。
ところが、現代社会というのは、どうしても子どもに成長のスピードを求め勝ちです。
早く立ち上がって歩けるようになることがよしとされ、何ならそれを促すような器具やおもちゃが、お店を見渡せば溢れかえっています。
床に座ってご飯を食べていた生活から、今はテーブルやソファーの生活が増えたため、赤ちゃんの興味は、自ずと空間の上へ上へと誘導されます。これも、「立ち上がる」準備を速めてしまうとのことでした。
講座では、幼児に十分な「ズリバイ」や「はいはい」の時間を与えてあげられなくなったことと、発達障害の増加との関連性を指摘していました。
ちなみに、中脳の発達を促すのも「はいはい」の動きなのだそうです。
ここまでを読んで、「もう手遅れだし・・・」と思われた方もいらっしゃるかも知れませんが、脳には「可塑性」といって、適切な環境要因でいくらでも変化し得ることが、近年の研究で分かってきています。
実際講座では、適切なアプローチをしたことで、発達の抜けが埋められて、お子さんが楽になったという事例が紹介されていました。
原始反射の統合と発達の関係は、近年注目されているまだまだ新しいエピジェネティクスのアプローチとのことですが、この概念を必要とされている方のお役に立てばと思い、記事に書かせていただきました。
きょうも最後までお読みくださりありがとうございました。
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写真家・認定心理士,産業カウンセラー
さとうみゆき
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