わたし歩記-あるき-

あなたの未完了の物語を身体アプローチと対話で再編集する心理カウンセラー のブログです

わたしとあなたの物語 4

 

その人は、よくこんな風に声をかけてきたものだった。

 

「今、ちょっとエネルギーが揺れてるんじゃない?」
「その感情、前世からのテーマかもね」

 

悪意はない。
むしろ、親切なのだと思う。

 

実際、救われた気がした夜もあった。

 

けれど、気づいていた。
会うたびに、身体のどこかが固くなっていたこと。


少しずつ、言葉を選ぶようになった。

思っていることを、
思っていないような顔で隠すのが癖になっていった。

 

ある日、その人から、いつものように訊かれた。

 

「最近、どう?」

一瞬、迷った。

本当のことを言えば、視透かされる。
意味づけされる。
こちらからは見えない物語に回収される。

 

だから、その日、初めて、
とても単純な答えを返した。

「うん、べつに、普通」

そのひと言に、相手は少しだけ戸惑った顔をした。
そこから先の言葉が、続かない。

 

沈黙が流れた。
不安な沈黙ではなく、
ただ、世界によくある、
平凡で、ありふれた、普通の沈黙。
意味付けのない、沈黙。

 

そして気づいた。

 

ああ、もう、
この人に守ってもらわなくても、生きていける。

 

それは強さからではなかったが、
むしろ、弱さから生まれた、
脱力という本来の強さだった。

 

別れ際、特別な言葉は交わさなかった。
関係が終わったわけでもない。
ただ、視られる場所に立たなくなっただけ。

 

見透かされないために距離を取ったのではなく
自分を隠さなくていい場所へ、戻っただけ。

 

分かってもらえない不安より、
分かろうとされすぎる緊張のほうが、
自分をすり減らすのだと知ったから。

 

目に見えない世界が嫌いになったわけではない。
曖昧な世界でも大丈夫だと思えるようになっただけ。

 

世界は、前よりも少し平坦になった。
その分、足の裏の感覚は確かだった。

 

きょうも最後までお読みくださりありがとうございました。

 

 

あなたの未完了の物語を身体アプローチと対話で再編集する心理カウンセラー
・愛着の傷 / 生きづらさ / 発達凸凹
・身体アプローチ × パーツセラピー × 原始反射統合
・心の安心基地をつくっています
日本心理学会認定心理士 / 療育整体師

さとうみゆき

 


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