
これは、独りになってしまう人と、
ひとりでいたい人が、たまたま出逢った
とても小さな物語です。
物語という形を借りていますが、
ここに書かれている感覚は、
私自身が何度も味わってきたものでもあります。
もしあなたにも、
帰り道に似た気持ちを抱えた記憶があるなら、
この物語が、少しだけあなたの隣に並ぶような存在になれたら嬉しいです。
これは、わたしとあなたの物語。
*
集まりが終わる。するとそこには、いつもと同じ景色が訪れる。
誰かが「じゃあね」と言って、空気がほどける。
私は少しだけ、ほんの少しだけ歩くのが遅い。
足が重いわけでも、考え事をしているわけでもない。
ただ、みんなと同じ速さで歩けない。
気がつくと、前にも後ろにも、誰もいない。
ああ、まただ、と思う。
この感じは、よく知っている。
子どもの頃から、ずっとそうだったから。
休み時間、教室を出るタイミングが少しずれると、
廊下にはもう誰もいなくなっていて、
遠くで笑い声だけが聞こえていた。
みんなを追いかけようとすると、足がすくむ。
今さら入っていってもいいのかな・・・?
行ったところで、何を話せばいいのかな?
邪魔じゃないかな?
そう考えているうちに、”輪”は完成してしまう。
大人になっても、それはまったく変わらなかった。
ただ、思いつく理由だけが増えた。
私と話しても、楽しくないのかな。
私がいると、場の空気が盛り下がるのかな。
だからみんな、少し後ろで溜まって、
私の横には来ないのかな。
後ろを見ると、人のかたまりがある。
肩が触れ合う距離で、自然に歩いている。
私はそこに入れない。
入ってはいけない気がしてしまう。
ひとりで歩く帰り道は、
いつも、自分を裁く時間になる。
呼吸するたびに、胸の奥がちくちくする。
その日も、いつもと同じように歩いていた。
すると、少し前を歩く人が、ふと立ち止まったのだ。
え?と不審に思っていると、おもむろに振り返って、私を見た。
「ひとり?」
その一言で、胸の奥がざわついた。
私が独りだってこと、見てわかるんだ・・・。
そう思ってしまった。
「……に、なっちゃうんです」
そう答えた声は、自分でも驚くほどか細く、自信なさ気だった。
その人は、少し考えてから言った。
「私はね、ひとりになりたくて、ここにいる」
同じ場所に立っているのに、
その人の足元は、私のとは、ぜんぜん違って見えた。
「独りって、つらくないですか?」
思わず、そう聞いていた。
咄嗟に、失礼なことを訊いたかもしれないと思い、顔を伏せてしまう。
「つらいときもあるよ。でも、”選んでいる”感じがする」
選んでいる・・・?
その言葉が、胸に引っかかった。
私は、独りを選んだことなんて、一度もない。
「あなたは違うでしょう?」
その人は、静かに言った。
「独りになってしまう人だ」
その言葉は、責めるでもなく、慰めるでもなく、
ただ、真実みたいにそこにあった。
「独りになることと、ひとりでいたいことは、似ているけど、同じじゃない」
私は、その違いを、ずっと言葉にできなかっただけなのかもしれない。
「あなたは、誰かと並んで歩きたかったんだよね?」
その瞬間、胸の奥で、長い間しまわれていたものが、少し動いた。
そうだ。
私は、ただ、誰かに隣にいてほしかっただけなのだ。
その人は、何も解決しなかった。
輪に入れてくれたわけでも、
誰かを連れてきたわけでもない。
ただ、私の隣を歩いていた。
ひとりと、ひとりで。
二人で歩く道は、相変わらず静かだった。
でも私は、独りではなかった。
分かれ道で、その人は言った。
「また独りになったら、思い出して。
ただ、その場所に、
あなたと並ぶ必要のある人がいなかったというだけのこと」
そこからの帰り道は、またひとりだった。
それでも、その足取りは、
もう以前と同じ重さではなかった。
(完)
きょうも最後までお読みくださりありがとうございました。
あなたの未完了の物語を身体アプローチと対話で再編集する心理カウンセラー
・愛着の傷 / 生きづらさ / 発達凸凹
・身体アプローチ × パーツセラピー × 原始反射統合
・心の安心基地をつくっています
日本心理学会認定心理士 / 療育整体師
さとうみゆき
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心のもやもやは、大きくなる前に話して、ケアしていきましょう^^
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