愛着に傷を負った方というのは、独特な精神発達過程を経て成人期へと達しています。画に描けたら良いのですが、恐ろしく下手なので文章で上手く伝わると良いのですが、幼少期に養育者に理解してもらえなかった自分自身の悲しみ、怒り、寂しさ、虚しさを、なかったことにしたり、ごまかしたり、感じなくさせようとしたり、理由づけたり、慰めるような”大人としてのパーツ”を、その都度創造し、生み出しながら大きくなった・・みたいな感じなんですよね。自分の中に自分の傷を守る大人が複数いるような感じとでも言ったらイメージできるでしょうか?
で、何かにつけてこの複数の大人たちが、悪い時はいがみ合ったり、良い時は協力しあったりして、その人の人格というシステムを運用しているんですね。
この複数の大人たち(子どもっぽい大人もいる)のことをIFS(内的家族システム療法やパーツ心理学)ではパーツと呼んでいます。
コアの感情を抱えた子どもを守り、覆い隠すようにして、複数の考え方を持った大人たちが城壁を固めているような人・・・。だから、本人は、”自己一致感”が持てないため、苦しみます。「あなたの本音が見えない」と悪気なく言われることも多いでしょう。一見、何事も卒なく、器用にこなしているように見える人が、「わたし、全く自分に自信がないんです」と言ったりするのはそのためです。
私自身、自分が抱いている自己イメージと、他人が思っている私へのイメージのギャップに非常に苦しみました。同じ悩みを抱えているだろうし、話を聴いて、本当に共感できる相手から、「私とあなたはやっぱり住む世界が違うから。」と言われて、距離を置かれたりしたことは、幾度となくありましたが、今は、それは私の”有能な大人たちパーツ”が、衝撃が私のコア感情に及ばぬように、物事を処理してきたからなのだろうと理解できています。
このような方にして欲しいのは、ご自身の認知が歪んでいようがいまいが、先ずは自分の感じている感情をそのまま認め、受け入れるということです。
これね・・・難しいです。涙
私だって、身体ボロボロになるまで、ことの真意が分かっていなかったんです。こんなに勉強したり、こんなに愛着トラウマに向き合ってきた(つもりだった)のに。
でも、いくつかのトラップには気づくことができました。
そしてトラップを踏まないコツは、
出来事への反応による
認知と感情
を一旦分けて考えよう!ということです。
例えば、会社の上司から、
「君のしている仕事だけど、来月からは別の人に担当してもらうよ」
と言われたとしましょう。あなたは、完璧ではなかったかも知れないけれど、その仕事に真面目に向き合って丁寧に取り組んできました。ところが、あなたに何の打診もなく、上司が一方的に決定事項として、異動を告げてきたのです。
この時、ヘルシーな愛着を持った方であれば、こんな風に尋ねるでしょう。
①「私の仕事のやり方のどの点が至らなかったのでしょうか?納得し難いので、説明をしてください。」
と。
一方、愛着トラウマがある人はどうかと言うと、
②「そうですか。分かりました。でも、その人の方が、職場にとっても、会社にとっても有益なのですよね?私では確かに役不足だと感じていました。今後の詳細が決まりましたら、教えてください。」
です。
2つの返答で、①と②どちらが物わかりの良い人に思えますか?
言い方を変えます。どちらが上司にとって都合の良い部下でしょうか?
当然②です。この模範解答を瞬時に紡ぎ出せるのが愛着トラウマを負った人です。でも、その返答には、どこにも感情の表出はありません。本当は、胸の内で、悲しみと怒り、恥の感覚が津波のように押し寄せているのにも関わらずです。
②の人は、その感情を「子ども」としてのパーツに感じさせないように、全力で大人パーツが対応している結果、人格者を装ったような返答が出来てしまうのです。結果、本当にコアで感じている感情は見捨てられていくことになります。
この自分の大人パーツたちから見捨てられ、無視された感情への怒り、悲しみこそが、「見捨てられ不安」を強化してしまっていることに、本人はなかなか気づけません。なぜなら、「投影」が起きてしまうため、自分を見捨てているのは、あくまで外側の他人であるかのように感じられるからです。
上司の言葉にあなたは傷ついたし、怒りを感じたし、哀しかった。それが、どんな種類の感情であったとしても、OKにしましょう!^^
大人パーツさんたちは優秀だから、きっといつもの通りに、模範的な回答をしてしまうかも知れないけど、それでも、何度でも、「その感情を感じてもいい」と自分に言いましょう。わざわざ相手に「自分はこんなにも傷ついているんだぞ!」と言いに行かなくても大丈夫です。
感情は、必ず身体のどこかに現れてきます。そして、認知には間違いはおきるけれど、身体感覚と言うのは、概して正しいものです。
感情をじっくり感じて、受け止めることが習慣化してくると、少しずつではありますが、「見捨てられ不安」も外側に投影されなくなっていきます。
きょうも最後までお読みくださりありがとうございました。
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写真家・認定心理士,産業カウンセラー
さとうみゆき
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