わたし歩記-あるき-

*心理士を目指す写真家の学びの記録*

なぜMLMに大切な友達を巻き込んではいけないのか

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 大学の講義の中でわたしが最初に触れた心理学実験は、エドワード・L・デシによる、「内発的動機づけ」の研究でした。どのような実験だったのかと言うと、こちらに書かれている記事が分かりやすいと思いますのでリンクを貼らせていただきます。

 

 

www.psychologytopics.info

 

 簡単にどのような実験であったのかを説明すると、普通わたしたちは、お金などの報酬を外から与えられた方が”やる気”(モチベーション)が上がると考えがちです。しかしデシはそれら外的報酬が、人が何か物事に取り組もうとするときに抱く、「やりたいから、やる!」「好きだから、やる!」「楽しいから、やりたい!」と言った純粋動機に当たる「内発的動機」を低下させることを実験で証明したのです。

 (より詳細に知りたい方はこちらの論文もお薦めです。自動でダウンロートされます。)

 

 

 デシの実験の結果を知った時、わたしは以前からずっと疑問に思っていたことの謎がひとつ解けたような気がしました。それは、「なぜMLMに友達を巻き込んではいけないのか」と言う問いでした。

 

 MLMと言うのは、マルチレベルマーケテイングのこと。ある商品を販売するのに、口コミの勧誘によって、ピラミット型の組織が形成され、上位にいる人は、下位の人が増えれば増えるほど、高収入を得られるという仕組みです。あらかじめお断りしておきますが、このビジネス様式そのものは違法ではありません。

 

 

 わたしは過去に3度、このMLM形態で販売している商品を購入していた時期がありました。いづれも当時とても深い付き合いをしていた友人たちからのご縁で知った商品でした。購入の理由は商品が気に入ったと言うただそれだけでしたから、わたしから誰かを勧誘し、自分の「下(ダウン)」に置くことはありませんでした。

 
 
 ただ、いくらその時気に入って購入した商品であっても、「もういらない」と判断したり、「他の店舗のもっと自分にあった商品に替えたい」と思うのは人として自然なことです。わたしは商品を紹介してくれた友人に特に報告することもなく、いずれの時も黙って解約届を提出してきました。ところが、明らかに、この時期を境に、それまで友好だった彼らとの関係が一転、疎遠へと向かっているのです。

 

 

 お金を払って購入しているのはわたしなのだから、解約もわたしの意思で行って良いはずです。けれど、先方からしてみたら、「せっかく良いものを紹介したのに、こちらの恩を仇にした自分勝手な人間」と言う解釈になるのでしょうか?結局、MLMでかかわりを持った3人とも、残念ながら今ではまったく連絡を取らない間柄になってしまいました。

 

 

 こうしたMLMにおける友人関係のトラブルは、あちこちで報告されていますので、世間ではMLMのイメージはどちらかと言えば「悪い」と言うのが定説です。でも、「商品が本当に素晴らしいから、大切なあなたにもぜひ紹介したいの!」とか「ここのMLMは世間で言われているのとは全然違うよ!」「そもそもMLMは違法ではないし!」「供給が少ないから、紹介という形でしか販路が持てないの!」などと真剣に説かれると、目の前の人とのこれまで積み重ねてきた信頼関係も相まって、「あなたがそこまで言うのなら・・」と気持ちが動かされてしまうのも、無理もないと思うのです。

 

 

 でも、結果として、このようにことごとく大切に思っていた友人関係が疎遠になったり、壊れていく体験を重ねていくと、やはりMLMにおいて、見過ごされている重大な何かが作用するからではないか?とわたしは考え、それをずっと見つけたいと思ってきました。それが、冒頭に書いたデシの「内発的動機」の理論です。

 

 

 例えばこうです。友人関係において、「内発的動機」に当たるものは、「その人と居るのが好きだから一緒にいる」、「その人と居るとただ心地よいから付き合う」、だとします。とくべつな理由なんて何もないけど、気づけばいつもそこに居る・・・それが本来の友人関係ではないでしょうか?けれど、そこに「外発的動機」である、「お金」と言うものが絡んでくるとします。MLMで言う、商品の売り上げのバック報酬ですね。次第に、その人が”大切な友人”から、自分に「キャッシュバック」を運んでくる存在になっていきます。するとどうなるかと言うと、デシの実験で証明されている通り、純粋動機である「その人が好きだから一緒にいる」と言う内発的動機が低下してゆく現象が生じます。目の前の人は、もはや”理由ありき”の友人へと成り下がってしまうのです。

 

 

 大切に思ってた人達との関係が疎遠になった当初、わたしは多少なりとも自分を責めました。「わたしが義理を欠いたせいかもしれないな」と。次に、彼らに怒りがこみあげてきました。「所詮、わたしのことを金づるぐらいにしか思っていなかったの?」と。ですが、デシの理論を知った時、救われる思いがしました。なぜなら、「純粋動機」と言うのは、それが強ければ強いほど、「外発的動機づけ」によって失われやすいと言われているからです。彼らがわたしと一緒にいることを快く思ってくれていたことは事実で、だからこそ、「外発的動機づけ」によって、それらが大きく失われたのだと、そう思うことにしたのです。

 

 

 いま、大切な友人からMLMの勧誘を受けて、悩んでいる方も多いかと思います。あくまで一案ですが、こんな風に、その友人に提案してみてはどうでしょうか?

 

 

 

「わたしが信頼しているあなたが、そこまで気に入って、お薦めしてくれる商品だからきっと良いものに違いないと思うの。わたしも使ってみたら気に入るかも知れない。ただ、もし購入する手続きをする際には、あなたのダウンラインでの登録ではなく、他のまったく知らない誰かのダウンラインにつけてくれないかな?心理学ではね、内発的動機は外発的動機によって減少するって言う実験結果があって証明されているの。つまりずっと友達で居たいって言う内発的動機がお金と言う外発的動機によって失われてしまうのが嫌なの。それで良ければ、購入します」と。この時点で快く了解してくれる人ならば、ただ純粋にあなたに商品を勧めたいだけという可能性が高いでしょう。もし、不満そうな顔をしたら、最初からあなたは彼らにとって「金づる」としか思われていないと考えてよいでしょう。

 

 

 また、逆も然りで、あなたがもし唯一無二の大切な友人を勧誘をする立場にいたとしたら、「もし商品を購入するときは、わたしのダウンにだけはあなたをつけないから、それだけ理解しておいてね。~~~って理由でね。」と言ってあげられるかも知れません。そうすることで「この素晴らしい商品をひとりでも多くの方に広めたいの!」と言うあなたの純粋動機は完璧に守られるでしょう。

 

 

 

 

 

 

きょうも、最後までお読みくださり
ありがとうございました^^
さとうみゆき