わたし歩記-あるき-

心理カウンセラーでもある写真家のブログです

なぜトラウマさんはアブナイ人に利用されやすいのか

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「なぜか人に利用されやすい」
「気づくと搾取されている」
「すごく良い人だと思っていると
最後はこっぴどく裏切られる」

 

これ、トラウマの中でも複雑性のPTSDや
愛着に傷がある方のお話を聴いていると
よく出てくるフレーズです。


 

実は私もずーっと人生で同じようなことが繰り返し起きるので
疑問で不思議で仕方がありませんでした。

 

どうしてなんでしょうか?

 

そんな時、先日読んだポリヴェーガル理論の本に
その答えとなるヒントを見た思いがしたのです。

 

 

ポリヴェーガル理論入門: 心身に変革をおこす「安全」と「絆」
 

 



トラウマや愛着障害を持っている方は、
常に心身ともに緊張状態です。

 

するとどうなるかと言うと、
人と人とが安心してつながることを促す神経である
副交感神経の腹側迷走神経系の働きが弱まり、
代わりにいつでも仮死状態になって
"捕食の痛み"を最小限に抑えようとする
背側迷走神経系の働きが優位になってしまいます。

 

背側迷走神経系が優位である場合、
常に脳も身体も凍りつきのストレス状態。
(乖離状態とも言います。)
副腎から分泌されるアドレナリンは
既にその働きをコルチゾールへと譲り、
日常が恐怖と怒りの覚醒状態でフル稼働です。

 

するとその怒りの影響を受けて、
扁桃体が麻痺してきます。
扁桃体には本来、人との信頼関係の構築に必要な
オキシトシンの受容体があるのですが、
その受容が阻害されてしまいます。
さらに扁桃体には人の感情や”善悪の微細な表情”を
区別し、見分ける働きがあるのですが、
これが働かなくなります。

↓  ↓  ↓

(参考資料)

表情コミュニケーションでの影響は感情から認知 — 京都大学

 

ここで注意して欲しいのは、
人を騙そうだとか、利用してやろう等と考えていない
ごく親切な一般の方たちの表情と言うのは
穏やかで、微かで、
大げさとも言える、
分かりやすい派手な表象がないと言うこと。

 

しかし、悪意と善意の表情が
見分けにくい状態になっている
トラウマさんたちにとっては、
その「普通の人」たちのごく当たり前に表出する
穏やかなトーンの表情が、
「無表情」で自分たちを「拒否」しているかのように
映ってしまうようなのです。
(私は実際にその傾向が見られました。^^;)

 


で、それだけで済めばまだよいのですが、
これが困ったことに!


「だましてやろう」
「利用してやろう」
「搾取してやろう」
「カモにしてやろう」

 

 と思っている人達の、
どこか大げさで演技がかった
過剰に甘いセリフや分かりやすい表情の方を、

  

「この人はなんて素敵な人なの!」
「なんて優しい人なの!」
「こんなにも自分を分かってくれる人、
これまでに出逢ったことなかった!」

 

と思い、簡単にほだされて
ついていってしまうのです。(涙)




本当の意味であなたを大切に思ってくれて、
幸せを願うからこそ時に厳しく意見もしてくれる
人生でつながるべき人たちのことは
「つめたい人だ」と認識して遠ざけてしまうのに・・です。
もうこれは、脳が生んだ悲劇と言うしかありません。
(そして、これが冒頭の”どうして同じことが
繰り返されるのか”の答えのヒントでもあります。)

 


最近よく読ませていただいている
加藤先生のブログに、
この誤ってしまう感覚がより詳細に書かれていると思いました。

namiuta0712.jugem.jp



 

 

近年、セラピストやコーチ等の立場にある方の中に、
このタイプの方が散見され、
今、カウンセリングの現場には
癒されにいったのに、マルチに勧誘されたり
高額なコンサルプログラムなどに契約されて
かえって心に深い傷を負ったと言う
クライエントさんが増えているとのことです。
なんとも皮肉で世知辛いことですが・・・。

 

 
 

私はSE™療法を受けた時に、
公認心理師の先生が、



「神経系が整ってくると、
アブナイ人と、そうではない人の区別が
ちゃんと分かるようになりますから安心してください」

 

と言ってくれた意味が最初は分かりませんでした。

 

 

でも、少しずつですが、
人の「表情」の読み方が、
以前とは違ってきたことを
実感することができています。
以前は、パッと見ただけで
「怖そう・・苦手、ダメかも」
だった人のことが、
「言葉はすごく優しいな」だとか、
「厳しいけど筋が通ってて好きだな」に
変わってきたのです。

 

 

「どうして自分は人に利用されやすいんだろう?」
「どうしていつもアブナイ人についていってしまうんだろう?」

 

 

そう思った時は、神経系から整えることも
一つの方法かなと思います。
私も神経系のエクササイズに関しては
地道に続けてゆきたいと思っています。
ここが整ってからでも、すべては遅くないと思うのです。

 

 

翻って立場が逆になったとき、
トラウマや愛着で苦しんでいる方と
カウンセリングや
善意でつながろうとする場合は、
なるべく自分の表情をはっきりと大きく見せることも
必要だなと感じています。
(特に、口元や、目元、顔の上部の動きが大切だそうです。)

 

 

また、今のご時世、
文章だけでのやり取りも多いかと思うのですが、
私はなるべく「かおもじ」を多用するようにしています。
文字のお付き合いとは言え、
そこにも「表情」の読み取りの機能は
しっかりと働いているからです。
(*マルチの中で、これを利用するように
指導されている団体があるそうですので
それはそれで要注意なのですが^^;)


以前はいい年した大人が、
「かおもじ」多用のメールを打つのってどうよ?と
怪訝に思っていたのですが、
トラウマや愛着で苦しんでいる方たちにとっては
その 「かおもじ」の一つが
信頼関係の構築や、その先のコミュニケーションを
許してもらえるのかどうかにかかっている場合があります。

 

 

私は今、神経系のセラピーの他にもう一つ、
ナラテイブと催眠療法についても学んでいるのですが、
(今月の末からは愛着問題の見立てに詳しい先生の
セミナーも受講します。)
愛着とトラウマ問題に関しては
認知行動療法等を介した顕在意識でどうこうするのは
難しいのではないか?・・・と、
自分自身の経験を通して実感しています。


 

これからもあらゆる方向から、
トラウマと愛着問題の改善については
検証し続けたいと考えています。